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皮膚科の先生からの投稿記事(97年1月12日)

Sun, 12 Jan 1997 00:04:12 +0000

こんにちは.私は現在静岡在中の皮膚科医(現在は形成外科を勉強中)の皮膚科医です.

松岡さんのホームページをみてアトピー性皮膚炎人口の多さ,その社会的問題について改めて認識させられます.私も皮膚科医ながら慢性蕁麻疹,結節性痒疹などの皮膚疾患をかかえており少なからずとも痒いと言う点でアトピー性皮 膚炎の皆さんの気持ちが少しでも解っているつもりです.

ちなみに私は上記疾患に医学生時代からかかっておりますが20歳くらいの時初めて発疹が出現してから受診した近くの皮膚科医院ではアトピー性皮膚炎だと診断されずっとその診断を信じていました.しかしながら自ら皮膚科医になっ てしばらくしてはたと気付きました.自分はアトピー性皮膚炎ではない!実は上記に書いた疾患だったのです.

これは昔の保険制度に問題があり,アトピー性皮膚炎と診断すると比較的高い保険点数がついたため慢性の皮膚病変などは違ってもアトピー性皮膚炎と診断されていたのです.今思えばその医師は確かに皮膚科専門医であり,このような医師が存在することは同じ皮膚科医として許せなく思っています.

アトピー性皮膚炎とは慢性疾患であり,初診時に詳しく問診・視診・触診さらに皆さんがご存じのようなIgE RAST(アレルギーの原因となる種々の特異的抗原を検索する)やパッチテストで確実に診断する必要があります.歯科金属やその他の抗原がアトピーに類似した症状を呈することがしばしばあり,原因取り除けば治癒が期待されるのにもかかわらず,原因検索もせず漫然とアトピーの治療を行っていることがあるからです.皆さんはアトピーの治療を行う前にしかるべき検査を行っていますか?

ただ残念なことにこれらで全てが解るわけではなく,検査結果はアトピーとは言えないが臨床症状がアトピーだという患者さんも少なからずいます.私は患者さんをアトピー性皮膚炎と診断するときは臨床症状に加え血液検査でダニ・ハウスダストアレルギーなどの典型的な検査結果が得られないときにはパッチテストなどでアトピーとしか言いようがないところまで検査します.そうやって医師も患者もアトピー性皮膚炎との診断に確信を持ち治療に踏み切ります.もちろんそう悠長にしていられない患者さんもたくさんいるので臨機応変にやります.

私はこのホームページをまだ2回しか見たことが無く,最近の投稿しかよめいませんのでもし失礼があったらすみません.投稿内容を読んでいると皆さんは非常によく勉強されており知識も豊富と思われますが,若干間違った情報が流れているのが気になります.今日拝見して気になったところを挙げてみると,9/26の男性の投稿でリンデロンを外用したところ30分程で発赤が出現したと書いてあります.話の流れではこれはまさしくステロイドのリバウンドだと誤解してしまう方がいるかもしれません.ステロイドは強い炎症作用を持っており,接触性皮膚炎(かぶれ)などにも短期間よく使用されますが,最近そのステロイド軟膏そのもにに接触性皮膚炎をおこしてしまうケースがあり,9/26の方はまさしくこれに当てはまると思います. これは別にステロイドに限ったことではなく,全ての薬剤でアレルギーは起こり得ますのでステロイドを糾弾 することはありません.最後の皮膚科医に処方された軟膏(トプシムでしたっけ?)をしようしていれば速やかに消退したと思います.

次に松岡さんがおっしゃるmoonfaceについてですが,松岡さんはステロイド内服を行っていたのでしょうか?というのはステロイド外用のみでmoonfaceが来ることはまず無いと思います.写真を拝見してもmoonfaceという印象は受けませんでした.moonfaceはステロイド内服を長期間行っている時のみ起こります.ただ,アトピー性皮膚炎増悪時には強い炎症・感染により浮腫が起こ顔が腫れ上がることはあると思います.松岡さんの場合はそうではないですか?もう一度写真を確認しておきますが...

最後にステロイドをやめてしばらく経つ方々が皮膚症状が増悪したときをしきりにリバウンドと表現されていますが,1年も2年も中止している人の増悪はリバウンドとは考えにくく,これは以前使用していたステロイドとは無関係だと思います.

アトピー性皮膚炎の最大の敵は掻爬であり,皮膚科医の間では引っかくことにより湿疹が湿疹を呼ぶとよく表現されます.アトピーのような複雑でない単純な湿疹でも引っかくことにより湿疹があちこちにできることがあるのです.私自身もこれは体験しています.ただ抑制 機構のある痛みと違い痒みは抑制機構がないので本当に苦しいですよね.皆さんも意識的に引っかかないようにしてください.簡単な,しかし以外に有効な方法は爪を深爪することです.私もどうしても無意識に掻爬してしまうことがありますが爪が伸びているときはてきめんに悪くなります.自分は絶対に掻いていないと言う人はまず爪をよく見てみてください.ぴかぴかになっている人は掻いている可能性が非常に高いです.

また,掻爬により皮膚はダメージを受け,皮膚に常在している菌が繁殖しやすくなります.その代表的な黄色ブドウ球菌はアトピーの増悪因子の一つとして現在脚光を浴びています.アメリカの皮膚科医のほとんどはアトピー増悪時に黄色ブドウ球菌に効く抗生剤を同時に出しています.

このように湿疹が湿疹を呼び悪循環を作って行くわけです.私は急性増悪したアトピーに遭遇した場合(ステロイド性皮膚炎でない者),この悪循環を断ち切るために一時的にステロイドを使います.ステロイドは長期的に,特に顔に外用しなければ良いと考えております.重症の患者さんに入院してもらった上でステロイドを外用し,皮膚炎が収まったところですかさず弱い物に変え,最終的にはワセリンや吸水軟膏などに変更します.ステロイドを使用している期間は長くて1週間であり,これによりステロイド皮膚炎になった患者さんは私はまだ体験していません.もちろん軽症の患者さんにはほとんどステロイドは使わず治療を行っています.

皆さんが懸念されているよりもアトピー性皮膚炎の治療は進んでいます.この5年間で2000以上の論文が海外で出されています.いろいろの治療法が実験段階にあり,アトピー性皮膚炎の未来はけして暗いものではありません.皆さいっしょに頑張りましょう.

最後に文献の話がよく出るのでそれに関して述べさせてもらいます.残念ながら日本の論文ではあまりいいものが見あたりません.最近の知見を総括している物は良いとして,治療,原因に関する論文は特にいまいちです.

皆さんが論文をお読みになるときその論文がどれだけ信用に値するかのポイントを少し挙げたいと思います.

  1. ある新しい治療法の場合,必ずコントロール (対照群)があること.良い対照群とは何の治療も行っていない物や,スタンダードな治療を行っている物です.それらの対照群と比較してなおかつ有意な差が出るのであればある程度信用できるかもしれません.コントロールが無いのにある治療法が効いたと 言ってもそれは信用に値しません.
  2. 調査の対象になったグループが大きいこと.皆さんが体験済みのようにトピーには波があります.ある治療法がたかが5人や10人に効いたからと言ってそれは信用できません.その治療を開始したときにたまたま良くなったからかもしれないからです.アトピーのような人口の多い疾患は対照グループがせめて三桁であってほしいところです.私の勉強不足かもしれませんが,アルリイオン水内服によりアトピーが良くなったとの大きいグループを対象とし論文を私は知りません.もし明石医院の先生がそのような論文をだされたら皮膚科医の間でもその治療法が試され,効果があれば一般的になるかもしれません.
  3. 対象になった患者さんにバイアスすなわち偏りがないこと.例えば成人性アトピーと小児アトピーはかなり原因も症状も異なりますので同じグループに成人と小児を入れても意味が無いどころか間違った情報を流してしまいます.
以上,思いつきで書いているので取り留めのない文章になってしまったかもしれませんがいわんとするところは解って頂けたでしょうか?

また皆さんの声を読ませていただいて投稿しようと思います.

アトピー性皮膚炎に関する海外の論文で非常によい物が最近出ています.今すぐ臨床で実地しうる物もあれば,まだ研究段階の物もあります.ほしい方はメールをください.文献名なら教えて挙げられます.

では


松岡→皮膚科の先生への返事(97年1月12日)

Sun, 12 Jan 1997 02:56:26 +0900

こんにちは、松岡慎治です。

> 方はまさしくこれに当てはまると思います. これは別にステロイドに限った
> ことではなく,全ての薬剤でアレルギーは起こり得ますのでステロイドを糾弾
> することはありません.最後の皮膚科医に処方された軟膏(トプシムでしたっ
> け?)をしようしていれば速やかに消退したと思います.

私はステロイドを最後に使っていた2年間はトプシムを使っていました。さすがにやめる前にはトプシムでももはや炎症は消えない状況になっていました。今でも忘れられません。塗っても皮膚がひりひりして、気休めにもなりませんでした。苦痛で睡眠不足が続いていました。

> 次に松岡さんがおっしゃるmoonfaceについてですが,松岡さんはステロイド内
> 服を行っていたのでしょうか?というのはステロイド外用のみでmoonfaceが来
> ることはまず無いと思います.写真を拝見しても特にmoonfaceという印象は受
> けませんでした.moonfaceはステロイド内服を長期間行っている時のみ起こり
> ます.ただ,アトピー性皮膚炎増悪時には強い炎症・感染により浮腫が起こり
> 顔が腫れ上がることはあると思います.松岡さんの場合はそうではないです
> か?もう一度写真を確認しておきますが...

この状態になるまでの2年間(1992年〜1994年)は、内服用の錠剤ももらっていましたが、すべて捨てていました。外用(頭はリンデロンVGローション、顔はアルメタ、体はトプシム)で、これらは「愛用」していました。また、捨てていた錠剤は赤い楕円形のものと、白いカプセルだったことを覚えています。これがステロイドだったかどうかはわかりません。

(抗アレルギー剤ではと思いますが、いずれにせよ内服は最低でも2年はしていませんね。)

だいぶ昔に溯って、大学2年から4年にかけての2年間は、皮膚科で左上腕の肩の部分(三角筋?でしょうか?わかりませんが)に筋肉注射を2週間に1回されていたのは覚えています。当時の医師の説明では、「体質改善の注射で副作用はない」と言っていましたが、この注射にステロイドが入っていたかどうかはわかり ません。また、この当時から私はひつこく「ステロイド外用剤に副作用は絶対ないのですね?」と何度もたずねていましたが、この医師曰く「厚生省が認可している薬だから絶対ありえない」と言い切っていました。今思うと、こういう医師ならステロイドの注射をすることにもためらいは無いのかもしれません。

いずれにせよ、

「moonfaceはステロイド内服を長期間行っている時のみ起こり ます。」

というのは間違いでしょう。

なぜなら、あの写真のときはmoonfaceはだいぶ治まってから撮影したものです。写真を見ればわかると思いますが、私は二本の足で立っています。立てるようになる前の一週間から10日の状態は写真には撮影できていません。寝たきりであった為、立ち上がって撮影など不可能でしたし、両親にも撮影できるほどの精神的な余裕もありませんでした。 写真のかさぶただらけの状態は確かにあなたのおっしゃりたいmoonfaceではないのは確かです。もっと赤黒くプヨプヨの状態です。写真がないのが本当に悔しいですが、moonfaceを私は実際に経験しているので す。

また、これが単なる「増悪時の強い炎症・感染により浮腫が起こり顔が腫れ上がること」であってもそこには筆舌に尽くし難い苦痛があった事実は消えません。

> 最後にステロイドをやめてしばらく経つ方々が皮膚症状が増悪したときをしき
> りにリバウンドと表現されていますが,1年も2年も中止している人の増悪はリ
> バウンドとは考えにくく,これは以前使用していたステロイドとは無関係だと
> 思います.

これはそうかもしれませんね。医師も患者もよくも悪くもリバウンドという言葉で一くくりにするところがあります。私もよく2回目、3回目、4回目、・・・n回目という表現をページ内で使っていますが、確かにステロイドをやめてから1年以上たったあとの何度かの増悪はリバウンドというより、感染症(カポジ?)だったように最近は思います。

> アトピー性皮膚炎の最大の敵は掻爬であり,皮膚科医の間では引っかくことに
> より湿疹が湿疹を呼ぶとよく表現されます.アトピーのような複雑でない単純
> な湿疹でも引っかくことにより湿疹があちこちにできることがあるのです.私
> 自身もこれは体験しています.ただ抑制 機構のある痛みと違い痒みは抑制 機
> 構がないので本当に苦しいですよね.皆さんも意識的に引っかかないようにし
> てください.簡単な,しかし以外に有効な方法は爪を深爪することです.私も
> どうしても無意識に掻爬してしまうことがありますが爪が伸びているときはて
> きめんに悪くなります.自分は絶対に掻いていないと言う人はまず爪をよく見
> てみてください.ぴかぴかになっている人は掻いている可能性が非常に高いで
> す.

さて、これは100%正しいのでしょうか?ステロイドを止めて間もない、又はリバウンド中、または感染症がおこりやすい抵抗力が弱い時は確かにこの通りです。

今の私は痒いときにはかきむしります。しかし、昔(ステロイド常用時)ならすぐに出血していましたが、今はある程度掻くと気持ちよくなって痒みは止まりますよ。

(但しこうなれるまで時間がかかったのはご承知の通りです。でも、ステロイドを使っていた時よりも症状もないのは皮肉な話です。)

> このように湿疹が湿疹を呼び悪循環を作って行くわけです.私は急性増悪した
> アトピーに遭遇した場合(ステロイド性皮膚炎でない者),この悪循環を断ち切
> るために一時的にステロイドを使います.ステロイドは長期的に,特に顔に外
> 用しなければ良いと考えております.重症の患者さんに入院してもらった上で
> ステロイドを外用し,皮膚炎が収まったところですかさず弱い物に変え,最終
> 的にはワセリンや吸水軟膏などに変更します.ステロイドを使用している期間
> は長くて1週間であり,これによりステロイド皮膚症となった患者さんは私は
> まだ体験していません.もちろん軽症の患者さんにはほとんどステロイドは使
> わず治療を行っています.

↑このくだりは患者さんは聞き飽きていると思います。聞いたことがない、体験したことがないのと、事実の有無とは別であるということをもう一度考えて頂きたいと思います。先生にとってよい機会です。ここになぜ患者が頭に来るのかが理解できれば、いいお医者さんになれるでしょう。もう一度じっくり考えてみて下さい。アトピー患者の気持ちに耳を傾けられる先生は、最初から最後までステロイドなど処方しません。

> 皆さんが懸念されているよりもアトピー性皮膚炎の治療は進んでいます.この
> 5年間で2000以上の論文が海外で出されています.いろいろの治療法が実験段
> 階にあり,アトピー性皮膚炎の未来はけして暗いものではありません.皆さん
> いっしょに頑張りましょう.

アトピー患者向けの免疫抑制剤の開発で藤沢薬品がフェーズUに入った等もこれに該当するのでしょうか? 私はこれにも不信感をもっていますが。少なくとも私は薬はこりごりです。

> 1. ある新しい治療法の場合,必ずコントロール (対照群)があること.良い
> 対照群とは何の治療も行っていない物や,スタンダードな治療を行っている物
> です.それらの対照群と比較してなおかつ有意な差が出るのであればある程度
> 信用できるかもしれません.コントロールが無いのにある治療法が効いたと
> 言ってもそれは信用に値しません.
> 2. 調査の対象になったグループが大きいこと.皆さんが体験済みのようにア
> トピーには波があります.ある治療法がたかが5人や10人に効いたからと言っ
> てそれは信用できません.その治療を開始したときにたまたま良くなったから
> かもしれないからです.アトピーのような人口の多い疾患は対照グループがせ
> めて三桁であってほしいところです.私の勉強不足かもしれませんが,アルカ
> リイオン水内服によりアトピーが良くなったとの大きいグループを対象とした
> 論文を私は知りません.もし明石医院の先生がそのような論文をだされたら皮
> 膚科医の間でもその治療法が試され,効果があれば一般的になるかもしれませ
> ん.
> 3. 対象になった患者さんにバイアスすなわち偏りがないこと.例えば成人性
> アトピーと小児アトピーはかなり原因も症状も異なりますので同じグループに
> 成人と小児を入れても意味が無いどころか間違った情報を流してしまいます.
この3つはある程度は理解できます。

さらに加えるべきは、

「ステロイドが何万人に効かなかったし、使う以前よりもその症状を悪化させて しまったのだから、アトピーの対症療法としても不合格であり、さらに信用 できない。」

ということですね。